旅と計画

計画と計画倒れとの記録

秋の秋田:化け猫からのなまはげの旅

生まれてこのかた行ったことのない県が7つある。北から青森、秋田、岩手、福井、三重、和歌山、宮崎だ。この夏に八幡平から秋田駒まで縦走して岩手と秋田に行こうと思っていたら、春からの熊騒動でなんだか水を差された感じになり行けなかった。秋口にどっか海外行きたいなぁとも思っていたけどなんだかピンとくるものもなく、ボケっとしている時に歌舞伎好きの友達が「こんな会場でやるよ。面白そうじゃない?」と秋田の康楽館での公演を知らせてくれた。演目はなんか怖そうな感じ。

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すごく古い。秋田には行ったことがないし、こういう雰囲気の中での観劇がどんなものなのかにも興味があったので行ってみることにした。f:id:sashim:20161022144016j:plain

明治の芝居小屋 国重要文化財【康楽館】|小坂まちづくり株式会社|小坂鉱山事務所|秋田県鹿角郡小坂町|常設公演|歌舞伎公演|

最初に入って二階席から見た康楽館はみっちり詰まった感じの狭さがあった。f:id:sashim:20161022151158j:plainお客さん入ったら圧迫感半端ないんじゃないだろうかと思ったけど、そこまでの圧迫感はなかった。客席はすべて畳敷きに座布団。後ろの方は低めの椅子になっていた。だからなのか会場全体の雰囲気が歌舞伎座や他の劇場とは違って茶の間っぽかった。観てる間も後ろのお客さんが崩した足の親指が、私のお尻に当たるなぁとか思ってた。私も正座なんて普段しないので体操座りだったけど。そして、ちょっと手を伸ばしたら役者さんに触れそうな距離感。会いに行ける歌舞伎ならぬ会いに来てくれる歌舞伎。サルがヘビ背負ってやってくるヤァ!ヤァ!ヤァ!なわけで、地元では観劇バスツアーがいくつも企画されていたらしく観光バスが何台も駐車場に停まってた。

AプロBプロどちらも観たけど、どちらもお客さんがすごく楽しそうだった。全く他の劇場とは違うお客さんの反応。とにかくゆるい。東京の劇場の一種気取った、何かやったらすぐに注意されるんじゃないかというハラハラ感が全くない(まぁそういう特別な一日感も嫌いじゃないというかそこまで回数観に行ってないですが)。そんなゆるい空間なので「いま入れ替わった!」とか「猿弥さんまた太った?」とかお客さんの心の声がだだ漏れだった。ご当地ネタはさらに沸いた。普段は食べない豪華なお弁当を食べて、非日常なはずなのに日常の延長のようなとにかく不思議な空間だった。私はお弁当は食べてないけど幕間にソフトクリームをいただいた。地元のはちみつが入っていて甘さ控えめで美味しかった。わざわざロビーに出なくてもお茶子さんにお願いしたら持ってきてくれるようだった。

町長の爆笑あいさつで幕を開けた土曜日の夜公演を観て大館のビジネスホテルで一泊。翌朝は昼公演の前に前日行こうと思っていたけど時間の関係で行けなかった十和田湖に行くことにした。発荷峠からはクネクネした道で、運転しながら気分は頭文字D(ノロノロ運転ですが……)。紅葉観光や、トレッキングツアーの団体まで朝早くから賑わっていた。f:id:sashim:20161023090738j:plainとりあえずどこまで行けば十和田湖観光したと言えるのか悩んだ末、昼の部に間に合いそうなので乙女の像までは行くことにした。f:id:sashim:20161023093133j:plain風が冷たい。時間があれば遊覧船とか乗ってみたかったな。f:id:sashim:20161023093925j:plain海外からの団体さんでいっぱいだった。ここの後はどこに行くんだろう?来た道を小坂まで戻って昼の部鑑賞。間に合ってよかった。劇中の演出で客席に渡してある渡り板を役者さんが歩く場面があり、役者さんがロビーに出た直後に幕間に客席に戻れなかったお客さんが恥ずかしそうに同じ渡り板を通って入ってくるのも面白かった。

そんなこんなで康楽館の雰囲気に盛り上がってしまい、館内見学できないものかと問い合わせたら24日の月曜は館内見学できるとのこと。これは行くしかない!俺たちのフットワークははやぶさより早いぜ!その前に男鹿温泉に泊まる予定になっているので劇場から車で10分ほどの七滝を見に行ってから男鹿に移動。移動の間も演目や劇場の感想を話したり話題は尽きなかった。七滝は水量もあって迫力もあったし、そばに道の駅もあるのでちょっとしたドライブにいいと思った。f:id:sashim:20161023141859j:plain男鹿に行くともう夕方でもあったからなのか風が強かった。宿では角部屋を取ってもらえて景色もよかったけど、夜中に風の音が結構聞こえて子供は怖がるかも。同行者に言わせると「日本海側はこれが普通」らしいので、瀬戸内のぬるま湯育ちの感想なのかもしれぬ。温泉はぬるめで、ぬるめ好きの私は嬉しかった。サウナにも久しぶりに入れて満足。秋田は最高気温が15度に満たない日ばっかりだったけど芯から温まれてぐっすり眠れた。f:id:sashim:20161024073009j:plain当初は小坂に戻る予定はなかったけど、急遽館内見学をすることになったので、宿を早朝出発して朝一番でなまはげ館を見学。結構新しい建物だ。朝8:30から開いているので助かった。f:id:sashim:20161024084529j:plainスーパー戦隊大集合のような各地域のなまはげ展示は迫力があり、なまはげの扮装ができるコーナーも楽しかった。時間があればお話も聞けたけど今回は展示のみにした。f:id:sashim:20161024085641j:plain

f:id:sashim:20161024085652j:plainなまはげポスト。投函するとなまはげを呼べるわけではない。f:id:sashim:20161024091336j:plain近くにある真山神社にもお参り。f:id:sashim:20161024092209j:plain

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f:id:sashim:20161024092318j:plain昼前に康楽館に到着。入館料は600円。見学は全て係の人の案内がつくのでしばし待つ。f:id:sashim:20161024115439j:plain外では昨日まで建物横に並んでいたコンテナハウスが取り壊されてる最中だった。係の人に何に使っていたのか聞いたら、床山さんとかがいる場所がなかったので増設していたとの事。確かに上演当日も、書き割りは使い終わった側から外に駐めてあったトラックにしまってたみたいだし、康楽館から道路を挟んだ向かい側の遊歩道で洗濯物干してたし、大変そうだった。お天気でよかった。

大変なのは外周りだけじゃなくて、上手と下手の移動も舞台裏のスペースが狭いので幕間にロビーでお客さんがごった返している中を三味線持って移動してスタンバるなど、見ている方は興味深く面白いけど演ってる方は大変だろうなと思った。だいたい花道自体がお客さんも使う廊下を通ってロビーに出ないと入れない。花道外の客席に通じるこの廊下を通ってロビーに出て、(補足すると廊下の右側が客席、左側は窓になっていて実際は縁側のような状態だけど、今回はその外にコンテナハウスが増設されていた。突き当たりは舞台袖。写真撮ろうとしたらライトつけれくれた。係の人ありがとう。)f:id:sashim:20161024122540j:plain階段の横にある引き戸を開けると花道に出られるようになってる。f:id:sashim:20161024122501j:plain芸者姿で私たちの通った廊下を激走する巳之助さんを見てみたかった。こんな感じで客席と裏方のエリアがハッキリと分かれていないので、一旦お芝居が始まると客席に入ってないお客さんは次の幕間までロビーで待機することになるという、考えてみると観る方も演る方も大変な状況なのだけど、劇場内の雰囲気はあくまでも柔らかく明るかった。

友達がチケ取りを頑張ってくれて花道のすぐ側に座れたので、役者さんが籠に上がってくる所が隙間から見えた。周りの人も「いま上がってきてる!」と大興奮。その時にジャッジャッという音が聞こえたのでジャッキで上げてるのかと思ったら滑車の音だった。f:id:sashim:20161024121014j:plain二人で両側に立って紐を引っ張ると滑車が上下する仕組み。息が合ってないと傾くらしい。

劇中に通った渡し板は足の部分が三角形の底辺と頂点を交互に取り付けてあって振動を軽減する仕組み。f:id:sashim:20161024122128j:plain「落ちぬようにな」と自然とお袖の手を取る半次郎がジェントルな場面だった。客席はクスクス笑ってたけど。

地下に通じる急な階段を降りると、舞台の下につづく廊下に出る。f:id:sashim:20161024120911j:plain廊下にはこれまでに行われた歌舞伎公演のポスターが。f:id:sashim:20161024120928j:plain

f:id:sashim:20161024121204j:plain今回使わなかった回り舞台の下も見せてもらった。外とつながっているので寒い!

その後いよいよ楽屋見学へ。f:id:sashim:20161024121600j:plain舞台裏の一階と二階に楽屋が並んでいるのだけど、常打芝居上演期間は劇団の道具が置いてあるので中に入れてもらえず、今回は歌舞伎公演が終わって常打ち芝居の道具が入る前だったので中に入って見学できた模様。f:id:sashim:20161024121856j:plainなので楽屋に書かれている役者さんのサインを探したかったら常打芝居を演ってない冬の期間がいいのかもしれない。

今回はお芝居も劇場もとても面白かった。また面白そうな劇場で公演がある時は声かけてねと友達にお願いして盛りだくさんの秋田(+ちょびっと青森)の旅が終わりました。これもなにかのf:id:sashim:20161024121719j:plain